January 16, 2017

Ⅲ級不正咬合の早期フェイスマスク治療について、システマティックレビューが役立つ情報をもたらす。

Ⅲ級不正咬合の早期フェイスマスク治療について、システマティックレビューが役立つ情報をもたらす。

 

不正咬合の進行を妨げることは臨床矯正において最も興味深いことの一つです。この投稿では早期のフェイスマスク治療のⅢ級不正咬合に対する効果に注目したシステマティックレビューについて、私なりの解釈を述べます。この研究は我々の患者を救うかもしれない有用な情報を提供するのではないかと感じています。

 

2か月前、私は早期のⅢ級プロトラクションヘッドギアについての大変良いトライアルに光を当てました。それは早期治療が外科矯正の必要度を減らすことを示していました。これは非常に役立つ知見できっと私を早期治療に向かわせるだろうと感じました。しかし、私たちはたった一つの研究に基づいて治療のフィロソフィーを決めてはいけません。そしてこのことがこのシステマティックレビューが非常にタイムリーである理由です。

 

Ⅲ級不正咬合の早期治療:システマティックレビューとメタアナリシス

rain1jpgEarly orthodontic treatment for Class III malocclusion: A systematic review and meta-analysis

See Choong Woon and Badri Thiruvenkatachari

Am J Orthod Dentofacial Orthop 2017; 151:28-52

DOI: http://dx.doi.org/10.1016/j.ajodo.2016.07.017

この論文の著者らはイングランド北部マンチェスター在住

 

彼らのイントロダクションの中で、リバプールのチームが2013年にⅢ級早期治療についてのコクランレビューを発表していることを指摘している。しかしそこではトライアルをたくさんは見つけることができず、さらなる研究が必要であると結論付けていた。今回の新しい論文はこのレビューをアップデートしたものといえる。

 

今回の研究の目的は:

 

「Ⅲ級不正咬合の早期治療に用いられる矯正治療方法の効果について評価すること」

 

彼らは何をしたか?

 

これはコクランレビューではないが、彼らは厳格にコクランの手法を踏襲した。

そのPICOは:

 

P(参加者):7~12歳のⅢ級不正咬合の子ども

I(介入方法):固定式あるいは可撤式の装置による矯正治療

C(比較対象):非治療者/治療を遅らせて行った

O(アウトカム):前歯部反対咬合の改善

 

私がとてもうれしかったことは、私がいつも不要だと考えているセファロデータの泥沼に彼らがはまらなかったことだ。

 

彼らは検索に際して、ランダム化比較試験(RCT)と前向き比較臨床試験(CCT)に限定してプロジェクトを電子検索にかけた。

 

RCTはコクランのバイアスのリスクツールを用いて、CCTはダウンズとブラックのチェックリストを用いて評価した。

 

彼らは何を見つけたか?

通常のフィルターを用いて関連すると認められた多くの論文の中から最終的に15編が選ばれた。そして9編のRCTと6編のCCTに分けられた。RCTの中で3編がバイアスのリスクが低いと判断され、残りはバイアスリスク不明と分類された。CCTはすべてバイアスリスクが高いと分類された。

 

このことから、このようなバイアスレベルの意味することは、今のところこのレビューが中等度のエビデンスを生み出しそうだと考察すべきと私は考えた。

 

CCTにおいてはバイアスリスクが高いことからデータの提示についてはさらに複雑であった。そこで私はRCTの中で治療群と非治療群とを比較した結果に注目することにした。

 

最も重要な知見は、前方牽引フェイスマスクの使用群と非治療群との比較でANBに3.9°(95%信頼区間3.5~4.2)の違いがあったということだ。重要なことであるが、一つの研究だけがオーバージェットの変化を計測していた。ここで、非治療群に比べてフェイスマスク使用群が2.5mm(95%信頼区間1.2~3.79)異なる結果を示していた。

 

それぞれの研究間で高度な不均質性を示していた。これは研究プロトコルのちょっとした違いから生じ、また結果の不確実性という点も加味されている。

 

私が何を考えたか?

これはいくつかの臨床に役立つ知見を得ることができる良いレビューと思いました。それでも、データの解釈は難しいのでバイアスの影響を受けない主要な臨床所見だけを見るようにしました。私はまた治療群と非治療群における効果にもより興味を持っていましたが、結果的には2つあるいはそれ以上の介入を比較するトライアルを実際は検討しませんでした。私がこの段階で多くの役に立つデータを除外してしまっていると思う人もいるでしょう。しかし、ある論文を解釈する単純なアプローチがより有用な情報を与えるということを私は常に感じています。

 

我々の結論は何でしょう?

フェイスマスク治療群と非治療群について3編のランダム化比較試験に注目しました。そこから得られた結果は:

 

「前方牽引フェイスマスクを用いた早期治療は短期的に骨格系および歯系での変化に臨床的に役に立つという結果になりそうだ」

 

しかし、私たちはこの知見についてかなり注意を払って解釈する必要があります。たとえば、この変化がのちの顔面成長にどのくらい維持されたか実際にはわかりません。バイアスとheterogeneity(異質性:研究内容が不均質であること)のために、依然としてこのレビューの結果の中にかなりの不確実性があることも忘れてはなりません。

 

それでも、このレビューは私たちの患者やその両親にⅢ級早期治療について説明するのに使える情報を与えてくれていると思います。

私は次のようにお話しできるかも知れないと感じています:

「これから早期のフェイスマスクでの治療を受ける場合に一つ問題があります。いまは前歯のかみ合わせを改善するよい機会です。しかしあなたが14~15歳になった時に今治療して得られる変化が維持されているかは私たちにはわかりません。」

 

呼吸の改善、自尊心の確立、環境の改善による顔面成長の修正、等々について私たちは明確に主張ができません。

 

この情報に基づいて決定することができるのです。多くの点でⅡ級早期治療の状況と似ています。これら両方の領域で今私たちには若干の有用な研究所見があります。

 

 

 

 

 

 

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