もう一つのピエゾシジョンと加速矯正に関する研究。
Another study on piezocision and speeding up tooth movement.
もう一つのピエゾシジョンと加速矯正に関する研究。
私たちは誰もが、歯をより速く動かしたいと思っています。しかし、それが可能なのかどうかは私には分かりません。ピエゾシジョンに関するこの新しい研究が何か新しい情報をくれるでしょう。
雑誌に掲載される加速矯正についての研究プロジェクトの数は増加しています。ほとんどの試験で新しい介入方法の効果を支持するエビデンスがないことを示しています。 ちょうどまたEuropean Journal of Orthodonticsが新しい研究を掲載しました。これを私たちの知識に加得ましょう。
コネチカットのチームがこの試験を行いました。
下顎前歯部叢生の軽減におけるピエゾトーム-コルチシジョン併用矯正治療の効果 ― ランダム化臨床試験
Flavio Uribe et al
EJO on line: advanced access. DOI: 10.1093/ejo/cjw091
治療時間が43%短縮された1件の研究があったと言っていますが、著者らはイントロダクションの中で、ピエゾシジョンを支持するエビデンスは幾分弱いと概説しています。 昨年この件についてブログに投稿しています。
彼らは何をしましたか?
この研究の目的は、ピエゾトーム – コルチシジョンが下顎切歯のアライメントのための時間を短縮できるか調べること。サンプリングは2-armのRCT(2本腕のランダム化比較試験)とし、PICOは、
P(参加者):セルフライゲーションブラケットを用いて非抜歯ベースで治療された下顎叢生を有する成人矯正患者
I(介入):ピエゾトーム – コルチシジョン(0uch!)
C(比較):介入なし(通常通りの矯正治療)
O(アウトカム):アライメントに要した時間。Little’s Irregularity Indexが2mm未満になるまでと定義した
グループ間に等しい数が割り当てられるようにブロックされたランダム化を行っています。研究に同意した参加者は、中に割り当てが入っている密封された封筒をボックスから取り出して、自分の治療法を選択しました。
彼らは何を見つけましたか?
治療開始時に群間の差はありませんでした。アライメントに要した時間のアウトカムデータを表にしてみました。
Conventional brackets | Damon Brackets | |
---|---|---|
Treatment duration (months) | 14.5 (95% CI 12.7-16.3) | 12.25 (95% CI 10.55-13.95) |
PAR score | 0 | 0 |
Gingival Index | 1.5 | 1.5 |
2つの介入法による違いはなかったことが分かります。
ただし彼らの施設のIRB(研究倫理審査委員会:Institutional Review Board)は、コルチシジョンの推奨の深さが3mmであるところを皮質骨内1mmまでの許可しか与えなかったことを指摘しています。これは重要なことなので後でまた触れることにします。
私は何を考えたか?
私は今回の研究がこれまで出版されてきたほかのトライアルと類似していると感じました。全般的に、研究はうまく行なわれ、それを非常にクリアに報告しています。方法論的に大きな懸念はなく、その結果は有用です。興味深いことに、この研究は「ピエゾシジョンが歯の移動速度を増しのか?」という疑問について調査した新しい研究であり、その結論はやはり「エビデンスはない」ということでした。
しかし、ピエゾシジョンを完全に却下することに、私たちは少し慎重であるべきです。それは、研究者が治療終了まで患者を追跡しなかったからです。これは重要なアウトカムです。しかし、誰が毎回の調整のたびにピエゾシジョンを受けたいでしょうか? 結果として、この研究の結果は私たちの知見に加えられることになりました。
IRB /倫理委員会の決定
ときに、論文の中に本当に面白く関連性のある文章を見つけることがあります。この論文では、IRB委員会の決定についてでした。より深い切開を骨に入れることの準備ができていないとIRBが裁定したことが重要です。これは、歯根を傷つけることが起こりそうだと懸念していたからです。
言い換えれば、委員会は “推奨された”治療が重大なリスクを伴うと感じていたということです。これは、外部の監督なしに、術者がテストされていない新しい治療法を実施することによって、患者を危険に曝すことができるという事実の素晴らしい例である。しかし、新しい技法が規制査定の対象となるときはいつも、外部評価者はそれを安全でないと見做すでしょう。結果的には、これらの技術を臨床応用している人たちによって、安全性リスクが潜在的に無視されているのかもしれないと思います。
要約
いつものように、現在わかっていることを要約してみましょう。
「ピエゾシジョンは、現在のところ科学的エビデンスによってサポートされていない、比較的侵襲性のある新しい技術です。さらに、外部のレビューは、推奨された技術で実施されたとしても、歯根を傷つけるリスクが存在することを示唆しています。」
これをあなたの患者に説明するときは、同意を得られれば幸運です。あるいは、「ピエゾシジョン・アダプター(adopter)」を使うことが本当にこれを説明できているでしょうか?
Emeritus Professor of Orthodontics, University of Manchester, UK.